「ジレンマの発表」を通じて、モヤモヤを引き出され、先輩のフォローに助けられた新人時代

看護師 水口美樹

私は子どもの頃は、身体が弱く、入院を経験したことがあります。その時、そこで働く人の姿を見て、医療に関わる仕事がしたいと思うようになりました。病気やけがをした人たちに関わり、何とかしようとしている姿勢に魅了されました。高校を卒業する時に、看護師になることに決めました。看護師イコール白衣の天使という優しいイメージを持っていましたが、新人の頃は、そんなイメージが吹き飛ぶくらい余裕のない状態でした。覚えることが多く、業務をこなすのに必死で、仕事に充実感を感じませんでした。つまり、看護をしている実感がなかったのです。それを如実に感じたのは、先輩の患者さんに対するケアを見ている時で、明らかに質が違い、その都度、もっといい看護がしたいと悩むばかりでした。ただ、それでも仕事を辞めたいとは思うことはありませんでした。それは、同期の仲間に悩みを打ち明けられることができたこと、みんなの悩みも聞くことができたことで励まされていたからだと思います。そして、職場のカンファレンスにおいても、「ジレンマの発表」をし、新人にできること、それは、経験年数がない分、一般の人の視点でものを見ることができ、看護師の仕事に素直に疑問をぶつけることだと先輩に言われ、それをすることで自分自身も看護の仕事を考えることができるようになりました。5,6年上の先輩がモヤモヤしていることを引き出して下さり、それを具体的な言葉にして頂き、丁寧なフォローのおかけで、看護師の仕事が徐々に楽しくなってきました。

患者さんが話したい時に話せるよう、向き合う時間を作り、気分のいい状態で過ごしてほしい

2年目、3年目にはどんどん看護師の仕事が楽しくなってきました。一つは、担当の患者さんに「ありがとう」と言ってもらえる機会が増えてきたことです。そして、患者さんの状況を踏まえて、医師に提案することができるようになったことです。そうこうするうちに、人事異動で、外科から消化器内科病棟に配属先が変わりました。やっと仕事が楽しくなってきたのに、また不安で悩み多い毎日が始まりの予感を感じました。しかし、消化器内科の患者さんはリピーターが多く、信頼関係が築けている人も多く、関係が深まり、それが看護に反映できるので、やりがいをたくさん感じることができます。私が最も大切にしていることは、患者さんやその家族としっかり話そうと意識して関わることです。例えば、病室では椅子に座って落ち着いて話すこと、時間があれば用がなくても話に行くといったことです。患者さんが話したい時に、可能な限りきちんとと向き合いたいというのが本音です。忙しくて業務に追われていることもありますが、できるだけ効率的に進め、向き合う時間を作ることを意識しています。初見の患者さんは関係が築けていないので、すぐには関係を深めることは難しいですが、それでも「元気になりましたね!」と声掛けをして、患者さんの不安を少しでも取り除き、気分のいい状態で入院生活を送っていただきたいと思って頑張っています。

「水口さん!」と呼んでもらえることが一生懸命やってきてよかったと思える瞬間

今後は、退院調整・支援をしっかり学びたいと考えています。訪問看護実習の時に、ある種のショックを受けました。患者さんにとって病院での生活は人生の一部であり、私のような人生経験の浅い人間がわかったような態度で指導をしているんではないかと自身の驕りを感じ、反省しました。委員会活動の一環で、訪問看護師と入院患者だった人のご自宅に同行しました。自宅で過ごすことは普通のことではあるが、疾患を持った人がそこで生活するのは想像以上に大変なことということを認識しました。ご家族は、それがどんな状態かをよくご存じです。私は、退院調整・支援に際しては、ご家族との情報交換、知恵の出し合いがとても大切だと感じました。自宅で生活するのはいいことだけれど、生活費などのお金のこと、ケアに関わるマンパワーのことなども勘案しながら、患者さんにとって適切な看護ができるようになりたいと思っています。一生懸命やっていると、「看護師さん!」ではなく、「水口さん!」と呼んでもらえるのですが、小さいことのようですが、とても嬉しい瞬間で、そんな瞬間が私の看護師生活の支えになっています。